【小学生でもわかる勧進帳②】面白いところはどこ?

たくさんの歌舞伎のお話の中でも名作と言われている『勧進帳』ですが、一体『勧進帳』のどんなところが面白いのでしょうか? ここでは、勧進帳を楽しむポイントをご紹介します。

実在の人物と史実をもとにしたドラマ

源義経は平安時代から鎌倉時代初期の実在の人物です。

平安時代末期、平家と源氏が激しく戦っていた頃に、源氏の棟梁であり兄でもある源頼朝のために働いた義経でしたが、謀反の疑いをかけられてしまい頼朝から追われる身となってしまいました。東北地方へ逃げたと言われています。

その逃避行を共にしたのが武蔵坊弁慶たちですが、実際にいたのではなくモデルとなった人物がいるようです。関所の役人冨樫も、モデルがいたようです。

昔はすべての出来事が詳しく記録されて残されていたわけではありませんでした。わずかなエピソードから後の時代の人たちがお話として作り上げた物がいくつもあり、勧進帳のお話もその一つです。歌舞伎には、そうした誰でも知っている史実を、ドラマに仕立てあげた作品が数多くあります。

牛若丸と弁慶が五条大橋で出会った話は多くの日本人が知っていますが、そうした誰もがしっている状況設定を利用することで、お芝居の世界にぐっと入りこみやすくなっているのです。

☆弁慶と冨樫によるニセモノの勧進帳をめぐるお芝居のやりとり

ここでは弁慶のとっさの機転で何も書いていない勧進帳を読み上げるほか、勧進帳を巡る富樫との激しい問答があります。弁慶と冨樫二人の役者による、丁々発止のセリフのやりとりは見ごたえがあり、お芝居の一つの山場です。この2人のやりとりは「山伏問答」と呼ばれています。

弁慶の機転によって窮地を逃れることができるのか!? 続く弁慶、冨樫の詰め寄りシーンまで、息を飲む緊迫感が続きます。

延年の舞

関所を通ったあと、冨樫が疑ったお詫びにと弁慶にお酒を振る舞います。お酒を飲んでいる間に逃げよ、ということだと悟った弁慶は、豪快にお酒を平らげ、「延年の舞」を披露します。酔っぱらったふりをして舞を踊りながら、弁慶は家来たちに合図を送り、義経たちを先に出立させるのでした。

ここからは、お囃子や笛の音色で、能を見ているような雰囲気となります。弁慶の舞と心に響く音曲は、邦楽を聞き慣れない人でも心揺さぶられること間違いなしです。

日本人ならではの感情、判官贔屓(ほうがんびいき)

家来である弁慶は主君義経を叩くなど有り得ないことです。でも弁慶は生きて関所を通るために非礼をわかっていながら叩くことで、自分たちが本物の山伏であることを冨樫に証明しようとしました。そんな弁慶の思いと、理不尽な理由で都を追い出された義経の不運に同情した冨樫は、一行を助けました。

判官(ほうがん)とは武士の役職名の一つで、源判官義経(みなもとのほうがんよしつね)から来ています。立場の弱い判官殿を贔屓する→判官贔屓という言葉になりました。

こうした冨樫の立場の弱いものに対するひいきの心は、日本人特有の「思いやり」の感情です。みなさんにも、こうした思いを感じたことはありませんか?

☆弁慶の飛び六方

「六方」とは六つの方角、天・地・東・西・南・北へ手足を動かして、花道を渡って引っ込む時の演技です。
飛ぶように足を踏んで行くので、「飛び六方」といいます。

弁慶最大の見せ場で、舞台を華やかに締めくくります。
今回の公演を行う江戸東京博物館のホールには花道がありません。客席内の通路を花道として利用するので、距離が長い上に階段になっています。果たして最後まで六法を踏みながら駆け上ることができるか!?
伝創館の舞台をご覧のみなさま、ぜひここで思いっきり掛け声をかけてください。
「待ってました!」「よっ、弁慶役者!」「〇〇〇!!(役者の名前)」などたくさん声がかかると、子どもたちも気持ちがノって最後までかっこ良く六法をキメることができるかもしれません!

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