主君源義経と義経に仕える武蔵坊弁慶一行は兄・源頼朝に追われ、京の都から東北へ逃げてきました。途中義経だとばれないために、一行は山伏という仏教の修行者に、義経は荷物持ちに変装しています。
とある関所で頭の切れる冨樫という役人に、「もしや義経ではないか?」と疑いをかけられ、足止めを喰らいます。ここでバレたら大変、義経一行は捉えられ処刑されてしまうかもしれません。逃避行は命がけでした。
そこで弁慶が策を講じます。「都の大きなお寺の修理のために日本中を回って寄付(=勧進)を集める旅をしている」と嘘をつくのです。
「それならば、証拠の勧進帳を見せろ!」と冨樫は弁慶に迫ります。
勧進帳には寄付の目的や寄付をしてくれた人の名前が書いてあります。また、関所を通るためのパスポートにもなります。でも嘘をついているので、そんなものは持っていません。弁慶はたまたま持っていた巻物を勧進帳に仕立て、まるで本物の勧進帳のように朗々と読み上げ、また冨樫からの質問にもスラスラと答えるのでした。
無事関所の通行許可が出て通り抜ける一行。しかし冨樫の家来に、「荷物持ちが怪しい!義経ではないのか!」と言われます。万事休す!
とっさに弁慶は、手にしていた杖で自分の主人である義経を叩きます。「お前のせいで疑われているのだ、グズグズしおって!!」
しかしそんなことでは冨樫は通してくれません。「なるほど、あなたがたがそれほど引き止めるのは荷物持ちの持っている荷物の中身が目当てだな、それでは泥棒ではないか!」と弁慶。
にらみ合う弁慶と冨樫。冨樫にはとっくに荷物持ちは義経だと、バレているのです。もうだめだと刀を抜いて切り掛かろうとする義経の他の家来たちを弁慶は必死に抑えます。
「それほどお疑いなら、この荷物持ちをいっそここで殺してしまいましょうか!」という弁慶の言葉にさすがの冨樫も「何も殺すことはない。それほどまでに主君を守るというのなら、ここを通そうではないか…。」
弁慶の主君を思う強い気持ちに心を動かされた富樫は、自分が罰せられるのを覚悟で一行を見逃します。
弁慶は義経に、涙ながらに非礼を詫びます。家来が主君を叩くなど決して許されることではないからです。
義経は弁慶の非礼を許し、その機転に深く感謝して旅の先を急ぐのでした。