今回「操り三番叟」にて、三番叟役を頂いた僕は、過去に経験した「棒しばり」と「かっぽれ」観賞したことのある「茶壺」などと比較して、実に特殊な踊り(舞踊)だと思いました。思い起こせば、こども歌舞伎のオーディションに合格して、初めて観た先輩方の演目で、当時の僕には衝撃が走りました。まず台詞がないこと。そして、生身の人間が無感情の人形になりきっていること。それまで全く知らなかった歌舞伎の世界観でした。これから僕が、どれ程 努力し、何年すれば、こんなに難しい役ができるのだろう?と思いました。
三番叟の役を頂き、僕は不安が先にでましたが、あの感動をくれた先輩のように観る人の度肝を抜いてやろう!と自分に言い聞かせました。同時に、初めて観たあの三番叟に負けない踊りを演じようという決意を持ちました。
僕は、小五の夏の公演後、一年半休会しました。休会中の三回の公演を見る度、若草歌舞伎の先輩方の進歩と、後輩達の成長ぶりにはびっくりしていました。復帰した最初の演目稽古でも若草の先輩がおられて、独特の緊張感があり不安が膨らみました。
さらに、花柳寿美蔵(はなやぎすみぞう)先生、花柳寿々彦(はなやぎすずひこ)先生によると、「今回この舞踊をするにあたって、他の稽古より高レベルでいく。」とおっしゃいました、その言葉通り、稽古はとてもハードで厳しかったです。中でも目の演技が難しく、瞬き厳禁と視線の先を制限することに苦労しました。
また、「糸で操られているのだから、自分から力を出してはいけないよ。」と指摘され、思うようにできずに悩みました。どうすれば人形のように舞えるのか?
僕は、自分の発汗具合で分かるかな?と思いました。汗が沢山出れば それだけ力んでいるということです。そんな時こそ「僕は人形だ。人形なんだ!!」と言い聞かせます。
残り一か月足らずの準備期間でやれることに精を出し、あの先輩の三番叟に追いつき追い越せるよう、頑張っていく次第にございます。
写真は上の糸が絡まり、暴走した三番叟が倒れ、その絡まった糸を、パートナーである後見がほぐして直そうとする場面です。このとき後見は、切れた糸がどの糸とつながっていたのかを確かめる為に、無数の糸の中から、それを探し出して試しに糸を引っぱります。当然糸とつながれた腕は上がります。言葉で説明するだけなら簡単そうに思えますが、その時三番叟はその腕、すなわち右腕がある右側ではなく、左側を向いて倒れてしまうので、後見の合図無しにはいつ腕を上げればいいのかわかりません!当然合図は出してもらいますが、それでも上げるタイミングに少々困惑します。この感情は決して表に出してはいけません。人形なのだから。
その他にも後見には、合図を出してもらってから行動に出るということが多々あります。僕のパートナーの後見は先輩としては3つ上、年齢は1つ上のイケメン君です。共演経験はありますが、「もっと仲良くなれるはずだ!」という程度の絆だったので、組合せが分かった時は、これを機会にもっとより深い信頼関係を築いていこうと思いました。
彼は、箱の中に入っている三番叟、つまり僕を引っぱり出して舞台中央に運んでくれたり、僕を持ち上げてくれたりしてくれるので、信頼関係が高まるのは勿論のこと。そして、三番叟と後見の信頼関係があってこそ、「操り三番叟」は完成すると、先生はおっしゃいました。二人の信頼はこの舞踊の土台同然なのです。
上記にて、「操り三番叟」の稽古レポートとさせて頂きました。少しずつですが、3グループとも確実に成長しております。お盆休みにご実家に帰られる前に是非とも江戸東京博物館にて、僕たちの踊りで楽しんで下さるよう存じます。何卒ご来場の程、御願い申し上げ奉ります。
(Reported by Kosho Shiina[こども歌舞伎])
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