小学生でもわかる弁天娘女男白浪(1)「浜松屋の場」編

セリフを楽しんで聴いてみよう!「浜松屋の場」編

みなさんは「歌舞伎」と聞いてまずどんなことを思い浮かべますか?
登場人物たちが全員着物を着ている、とか
昔のことをお芝居で演じている、とか
セリフが昔の言葉だからわからない、
などなどあると思います。

確かに歌舞伎が出来た江戸時代と今とでは、着ているものも話している言葉も違うのでわかりにくいところがありますよね。今回は歌舞伎独特のセリフについて、上演演目の「弁天娘女男白浪」とからめてお話します。

歌舞伎の演目にはざっくり分けて「時代物」「世話物」という2種類があります。
「時代物」はいわゆる江戸時代の人たちが当時見ていた時代劇。
江戸時代の人たちにとっての時代劇だから言葉も難しいのです。
「世話物」は世間の話、つまり江戸の人々の日常をリアルに描いたドラマです。
江戸時代の人たちの話し言葉のままのセリフなので、今私たちが話している言葉とそんなに変わらず、意味もわかりやすくなっています。

「弁天娘女男白浪」の中でも「浜松屋の場」は世話物になります。
弁天小僧と南郷力丸。二人の大悪党がそれとばれないよう変装して呉服店を訪れ、金銭をだまし取ろうとする悪だくみの一部始終を、江戸っ子独特の江戸弁でたっぷりと見せてくれます。商人が使う親しみやすい江戸ことば、お侍さんが使うちょっと偉そうな江戸こどばなどの違いも楽しめます。

加えて作者の河竹黙阿弥のセリフは「七五調」といって、セリフを五・七・五のリズムに乗せる演出をしています。五・七・五が作り出すリズムは日本語を美しく聞かせる大切な役割を持ち、お客さんに音楽を聴いているような心地よさを感じさせるのです。
でもセリフのすべてが七五調ではありません。
ここぞ!という場面で伝家の宝刀「七五調」を繰り出してお客さんに聴かせるのです。
弁天小僧が一呼吸おいて『知らざあ言って聞かせやしょう』と来たら、ぜひ「待ってました!」と大向うを気取ってください。
それまで鳴っていた下座もやみ、つかの間の静寂ののちに弁天小僧の鮮やかな啖呵(たんか)が始まります。
意味が分からなくても大丈夫。
リズムの心地よさ、江戸弁の気持ちよさを楽しんで聴いてください。

浜松屋なぜ弁天が啖呵を切るのか?
それは、それまでの話をよーく聴いていてくださいね。

続いては「稲瀬川の場」のセリフについてのお話です。…つづく