延享三年(一七四六年)初演。二代目竹田出雲、三好松洛、並木千柳の合作。平安時代の菅原道真の失脚を題材にした五段続きの演目です。
道真とその周囲の人々に起きる悲喜こもごもを描きます。今回は三段目から「車引」を上演します。
それぞの主家とのかかわりから、生き方も分かれてしまう梅王丸、松王丸、桜丸の三つ子の兄弟それぞれの特徴ある演技と立ち回りにご注目ください。
主な登場人物
梅王丸:菅丞相(かんしょうじょう=菅原道真)に仕えていた三つ子の長男。腕っ節が強く喧嘩早い。
松王丸:藤原時平に仕える三つ子の次男。頭がよく、落ち着いている。
桜丸:斎世親王(ときよしんのう)に仕えていた三つ子の三男。やさしげな風貌でおっとりしている。
藤原時平:(ふじわらしへい)菅丞相を流罪に追いやった政敵。
あらすじ
菅丞相(菅原道真)は流罪になり、丞相の姫と恋仲だった斎世親王もお預けの身になったため、二人に仕えていた梅王丸と桜丸は浪人になっていました。ある日、たまたま出会った二人。菅丞相流罪の原因を作ったのは自分だとわが身を責める桜丸の話を梅王丸が聞いているところに、藤原時平が神社参拝にやってきます。
時平の乗った牛車を見て、主君の無念を晴らそうと二人は牛車をとめますが、今は時平に仕えている松王丸が止め、兄弟三人の大立ち回りになり、梅王丸と桜丸は、その牛車をこわしてしまいます。中から現れた時平に梅王丸と桜丸が斬りかかるも、妖力を持った時平のひとにらみに立ちすくんでしまいます。
再度止めに入った松王丸に実は命を救われた二人は、そのことを知らず、松王丸と対立するのでした。
コラム ~その後の三つ子たち~
主家を失いばらばらになってしまった三つ子たちは、その後どうなってしまうのでしょう?
長男の梅王丸は、九州筑紫(現在の福岡県)の菅丞相のもとへとたどり着き、次々と現れる時平からの討手と戦いながら、菅丞相を守っていきます。
次男の松王丸は、実は菅丞相に恩義を感じており、時平の下を離れたいと考えていました。寺子屋にかくまわれていた菅丞相の息子秀才に魔の手がせまったとき、わが子小太郎をその身代わりに差出し、秀才を助けます。
三男の桜丸は、菅丞相流罪のきっかけを作ったのは自分と、父親の賀の祝いの場で切腹して果てます。後にその妻も時平の部下の手にかかって死んでしまいますが、二人は最後の最後で、時平のもとに幽霊となって現れ、仇を討ちます。
キャスト
A | B | C | |
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松王丸 | 斎藤すみれ | 北島剛希 | 和田花梨 |
梅王丸 | 前田彩花 | 力石明 | 力石明 |
桜丸 | 田中里奈 | 玉置晴菜 | 奥山佳穂乃 |
藤原時平 | 飯田織夢 | 飯田織夢 | 坂田峻之介 |
杉王丸 | 鶴谷悠平 | 西村千春 | 岡田凱 |
雑式 | 石井悠翔 | 斎藤すみれ | 北島剛希 |
仕丁① | 三縞柚果 | 奥山佳穂乃 | 三縞柚果 |
② | 玉置晴菜 | 鶴谷悠平 | 前田彩花 |
③ | 川野輪真央 | 川野輪真央 | 達木亜依莉 |
④ | 西村千春 | 板倉琉世 | 板倉琉世 |
⑤ | - | 中津にこ | 中津にこ |
⑥ | 奥山佳穂乃 | 成島心太朗 | 成島心太朗 |
後見① | 坂田峻之介 | 和田花梨 | 齋藤すみれ |
② | 和泉一真 | 田中里奈 | 飯田織夢 |
竹本 | 和田花梨 | 三縞柚果 | 玉置晴菜 |
力石明 | 前田彩花 | 田中里奈 | |
- | 坂田峻之介 | 和泉一真 | |
- | 和泉一真 | 石井悠翔 |