【演目紹介】連獅子

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明治五年、江戸市村座初演。

勇壮な毛振りで知られる「連獅子」は、歌舞伎で最も知られた舞踊です。

前半は、清涼山で遊ぶ親子の獅子、やがて親獅子が仔獅子を深い谷に蹴落としてその力を試すという中国の故事にならったストーリーを狂言師が演じます。後半は、牡丹の香りに酔う親子の獅子の精が、を振り乱して激しく踊る様が見どころとなります。

また、本公演では前後半の間に、「宗論」をはさみます(間狂言)。清涼山を目指してたまたま道連れになった二人の僧が繰り広げる宗旨争いのとぼけたおもしろみもあわせてお楽しみください。

⚫︎獅子(しし)もの

歌舞伎には○○獅子という名前のついた演目がたくさんあります。それらを総称して「獅子もの」といいます。

その中でも能の「石橋(しゃっきょう)」をもとに作られた作品は「石橋(しゃっきょう)もの」と呼ばれています。「石橋(しゃっきょう)」に登場する獅子は、中国の想像上の生き物。清涼山(せいりょうざん)という山に住む、とても神聖な霊獣です。
この獅子をテーマとした作品は、例えば「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」「英執着獅子 (はなぶさしゅうちゃくじし)」などがあり、「連獅子」もその一つです。

踊り手は獅子をイメージした、床に毛先が付くほどたっぷりとした長い毛のかつらをつけます。親子の獅子が荒ぶり毛を振り回す場面はとても勇猛でかっこうよく、舞台のクライマックスで最高に盛り上がる場面です。

⚫︎獅子と牡丹

連獅子など”石橋もの”の舞台には、必ず大輪の牡丹の花が飾られています。日本や中国の襖絵や屏風などの紋様にも獅子と牡丹は見られます。このような獅子と牡丹の美しい組み合わせが描かれるのには理由があります。

百獣の王といわれる獅子にも実は苦手な物があります。それは「虫」です。体に寄生する虫によって命を脅かされることもありそれがいわゆる「獅子身中の虫」。身内でありながら災いをもたらす者といった意味で用いられますが、元々は仏教に由来する言葉です。

獅子身中の虫から身を守る特効薬とされるのが、牡丹の花の夜露。そのため獅子は、夜には牡丹の花の下でゆっくり休むと考えられているのです。