小学生でもわかる弁天娘女男白浪(2)「稲瀬川の場」編

セリフを楽しんで聴いてみよう!「稲瀬川の場」編

「浜松屋の場」に続けて上演するのが「稲瀬川の場」。
これは前の場面とはがらりと変わり、満開の桜咲く稲瀬川の堤(土手)をバックに華やかに捕物が行われます。捕物(とりもの)とは悪いやつを追い詰めて捕まえること。今でいう刑事ドラマみたいなものですね。

ここでのセリフはちょっと難しい時代物となります。
前の場面の世話物で少し歌舞伎の空気感に慣れたところで、時代物の稲瀬川の場を観てみましょう。
と言っても作者は河竹黙阿弥。
取っつきにくい時代劇を、七五調のリズムに乗せて心地よいお芝居に変えてしまいます。

この場面では五人男たちのセリフはほとんど七五調で話します。
花道から登場した五人が、一人一人順番に言っていくセリフは、会話をしているようなしていないような。
でも話が繋がっていることはわかります。

これを「渡り台詞」と言います。

それから捕手に捕まるとき、一人づつ名乗り出ます。
「俺はこんな名前で、今こんな状況になっているのはこんな生い立ちがあって、こんな悪事を働いてきたからだ。逃げも隠れもしない。どうせ捕まるなら正々堂々と捕まってやるからよく聴けよ」
と五人が順番に白状しているわけです。
それを三味線の華やかな糸に乗せ、かっこよく音楽的に聴かせているのです。

これを「ツラネ」と言います。
このツラネが稲瀬川の場最大の見せ場で聞かせどころ。
そしてこの場面こそが、今TVでやっている戦隊ヒーローもの誕生のヒントになったのです。

なのでみなさんも観劇の際には、戦隊ヒーローたちを応援するつもりで、思い切って大向うの掛け声をしてみてくださいね。
出演者のテンションも一層上がって、かっこよく決めてくれるはずですから!
稲瀬川の場ではそんなライブ感をぜひ楽しんでみてください。
稲瀬川